- レポート提出といわれたけどそもそも作文や小論文とどう違うの?
- 卒論の締め切りが迫ってきたけど、何を書いたらいいかわからない。
- 序論や結論って何を書いたらいいんだろう。
大学4年生になって卒論を書かなければならず、作文・小論文・レポート・卒論の違いもよくわからないまま卒論を書いている学生も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、そのような大学生のために、レポート・卒論の書き方について、わかりやすく解説します。
動画も作成しましたので、文字だけではわからないところ、もっと詳しく知りたいところは、動画を視聴してください。
この記事を上から順番に一通り学習することにより、レポート・卒論・論文の書き方の基礎がわかります。
ただし、分野により、細かいところは異なりますので、細かいところは先生の指示に従いましょう。
大学の教員で卒論指導を毎年行っています。国際誌・学会誌・大学紀要などに100本以上の論文を発表してきました。Language Learning, The Modern Language Journal, Systemなどの国際誌の査読者もやっています。
大学生のためのレポート・卒論の最も重要なこと
大学で提出するレポート・卒論は多少の違いはありますが、基本は同じです。
レポート・卒論,特に、卒論にとって最も重要なことは、「問い」を見つけて、その「問い」に答えることです。
その一言につきると思います。
その「問い」に対して証拠を出しながら、ルールに従って書いていくのが論文、すなわちレポートや卒論です。
そのことについて詳しくお話する前に、作文・小論文との違いについて解説します。
レポート・卒論と作文・小論文の違い
大学に入って「レポート提出」という語を盛んに耳にするようになったのでありませんか。
そして、レポートという言葉を耳にしたとき、「レポート」と「作文」との違いがよくわからないまま「とにかく何か書いて提出しなくてはいけない」という思いに駆り立てられている人も少なくないかと思います。
人によっては、高校生まで盛んに書いてきた「作文」を大学では「レポート」と呼ぶのかななどと思っていたりするのではないでしょうか。
では、大学で書くレポート・卒論と高校生までに書いていた作文・小論文とどう違うのでしょうか。
作文・小論文の特徴
作文・小論文の特徴は以下のようになります。
- 個人の体験談
- 個人的な体験に基づく主張
- 起承転結
- 自分の感じたこと、思ったことを書けばよい
作文と小論文の違いは以下のようになります。
作文(感想文):自分の感想を述べる文章(=感じたこと)
小論文:自分の意見を主張する文章(=考えたこと)
レポート・卒論の特徴
一方、大学に入ってよく聞くレポート・卒論の特徴は以下のようになります。
- 問いに対する答え
- 事実に基づく主張
- 序論・本論・結論
- 客観的な証拠と論理的な推論が必要・自己の主張を論理的に説明する
- 自分の主張をいうために客観的な証拠(論文やデータ)を並べて主張する
レポートと卒論の違いは以下のようになります。
- レポート:先生から与えられた問いに答える。
- 卒論(論文):自分で問いを立てて自分で答える。
レポート・卒論の問いとは何か。
先ほどから「問い」と出てきていますが、では「問い」とは何でしょうか。
問いとは
レポートで述べる内容を決めるもので、 「問い」がなければレポートは書けない。
問いの例
- 「~は良いか悪いか?」
- 「~はどのようになっているか?」
- 「~と~はどこがどのように違うのか?」
- 「どうしてか?」
具体例
- 世界の小学校の英語教育はどのようになっているのか。
- 日本と韓国の英語教育ではどのように違うのか。
- 小学校から英語を教えることは効果があるのだろうか。
このような問いに答えていくのが、レポートや卒論・論文です。
つまり
- 先生が出す問いに答えるレポート
- 自分で問いを立てる卒論・論文
こちらの動画ではより詳しくレポート・卒論と作文・小論文の違いについて解説しています。

レポート・卒論のテーマを選ぼう
「問い」を探すことは分かったと思うのですが、ではどのようにして「問い」やそもそも何について書くかという「テーマ」を見つけたらいいのでしょうか。
レポート・卒論のテーマを選ぶ際のポイントは3つあります。
- 指導教官のテーマや指導教官が書かれた論文に近いテーマ
- 自分の興味のあるもの・驚いたこと
- 就職の面接で語れるもの
指導教官のテーマや指導教官が書かれた論文に近いテーマ
指導教官のテーマや指導教官が書かれた論文に近いテーマのメリットは以下の3つです。
- 手厚い指導を受けられる。
- 関連論文を紹介してもらえる。先生の書いた論文を先行研究にできる。
- 書きやすい。(先生が指導しやすい)
デメリットは当たり前のことですが、
- 面白くない。(人によりけりですが)
- 指導が細かすぎる。(手厚い指導が受けられるの裏返しです)
レポート・卒論のテーマは自分の興味のあるもの・驚いたこと
レポート・卒論のテーマを自分の興味のあるもの・驚いたことなどにした場合、
メリットはなんといっても
- 楽しい。
デメリット
- 先生の指導が行き届かなくなる。
当たり前のことなのですが、先生は万能ではないです。
自分の分野のことはすごく詳しいですが、分野外のことはもちろん素人です。
なので、専門外だと、あまりうるさく指摘してこないか、あるいは、的外れな指導をする可能性があります。
レポート・卒論のテーマは就職の面接で語れるもの
エントリーシートのアピール欄や就職の面接のときに胸を張って「これを研究しました・これを勉強しました」と言えるものは何だろうという観点で卒論のテーマを考えてみましょう。
たとえば、
- 自分の受けたい業種に関係のあるものや重要なもの
- トレンドになっているもの
- 話題になっている社会問題
- ニッチな話題で、面接菅の興味を引く(これで成功したゼミ生がかつていました)
- 2つや3つの掛け合わせ(学際的研究)
テーマは絞ろう
それから、テーマは絞った方が書きやすいです。
たとえば、「外国人観光客について」「日本のインバウンドについて」なんていう題名で論文書いたら、どこに焦点をあてていいのかわからなくなり、まとまりのない論文になります。
どこかの温泉1か所に絞る、どこかの旅館1か所に絞るという方が、書きやすいし、価値のある論文になります。
卒論のテーマの選びについての詳細はレポート・卒論・論文のテーマの選び方4つのポイント
また、テーマについて動画でより詳しく解説しています。
こちらも参考にしてください。
- Part 1ではテーマを選ぶポイント
- Part 2では選んだテーマをどのように研究に昇華させていくか
レポート・卒論の構成
では、次では、レポート・卒論の具体的な構成についてお話します。
レポート・卒論の特徴として以下のことがあげられます。
- 「問い」が立てられている
- 「問い」に対して「答え」が示されている
- 客観的な事実(資料・データ)に基づき論証されている
- 「序論」⇒「本論」⇒「結論」
- 表現は明確に、分かりやすく、シンプル
すなわち、レポート・卒論・論文の構成は大きくわけると以下の3つに分かれます。
レポート・卒論の基本的な構成「序論」⇒「本論」⇒「結論」
序論
問いを提示する
本論
答えを導くための論拠や根拠を挙げる
自分の主張をいうために客観的な証拠(論文やデータ)
を並べて主張する
結論
問いに対する答えを提示する
全体のまとめ(新しい意見は出さない!)
簡単にいいますと、
序論で問いをたてて、論文やデータなどの客観的な証拠を並べながら、答えを導いていくというものです。
だから結論では、序論で立てた問いに結論で答えをきちんと提示する必要があり、ここがびしっと筋が通っている必要があります。
簡単で当たり前のことなのですが、多くの人の論文を添削・査読してきましたが、意外とこれが出来てないものが多いのです。
さらに、細かくわけると以下のような2つのパターンになります。
論文のパターンについてもっと詳しく学びたい方はレポート・卒論・論文の3つのパターン:実験・調査系か文献研究かをご覧ください。
パターン1「序論」⇒「先行研究」⇒「考察」⇒「結論」
こちらは文献調査を主にした研究の場合です。
パターン1
- 「序論」
- 「先行研究」
- 「考察」
- 「結論」
1「序論」・2「先行研究」
序論で問いを提示して、先行研究、すなわち文献や資料で証拠固めをします。
3.「考察」・4「結論」
それに基づいて、考察で自分の意見を書いて、最後に結論という形です。
パターン2「序論」⇒「先行研究」⇒「目的」⇒「結果」⇒「考察」⇒「結論」
こちらは心理系の実験や質問紙調査・授業実践研究などで、統計手法を取り入れた場合のパターンです。
パターン2
- 「序論」
- 「先行研究」
- 「本研究の目的」
- 「方法」
- 「結果」
- 「考察」
- 「結論」
1「序論」・2「先行研究」
序論で問いを立てて、先行研究で今までの研究を提示します。
3.「目的」
先行研究をもとになぜこの研究を行うかとはっきりとした目的を立てます。
場合によっては、リサーチクエスチョン、すなわち序論で立てた問いをもっと明確・具体的にここで示します。
4.「方法」
ここで実験・研究の方法を明示します。
方法の書き方は自分の論文の内容と類似する論文の型を真似ればいいです。
つまり型をそのまま真似て、中身を自分の内容に書き換えていくということです。
5.「結果」
統計分析の結果などをここで示します。
分析の部分も自分の自分の論文の内容と類似する論文の型を真似てください。
中身を自分の結果に書き換えていきましょう。
6.「考察」
考察では統計分析の結果や先行研究での文献を示しながら、自分の意見を表明していきます。
7.「結論」
最後に結論です。
パターン2についてもっと具体的に学びたい方は卒論・レポート・論文の全体の構成【インバウンド研究の例で解説】をご覧ください。
序論の書き方
序論は最初にざっくりと書いて道筋を立ててから、一番最後に結論と一緒に仕上げていきます。
つまり、実際に序論を書いて仕上げるのは、最後でいいのです。
ただ、最初にどんな問いに答えていく論文なのかを決めないと、何をやっているのかわからなくなります。
そのため、最初にざっくりと序論を書いておいて、最後に仕上げるというやり方をおすすめします。
序論の書き方について説明します。
序論は逆三角形に書いていきます。

例を一つあげます。
世界中で小学校で英語教育が始まり、早期英語教育が盛んになっている。特に、アジアの中でも韓国が早期英語教育が進んでいる国の一つといわれているが、韓国の早期英語教育はどのように進んでいるのであろうか?
わかりやすく場所を取り上げましたが、世界→アジア→韓国というようにどんどン特定なことに絞り込んでいます。
問いが韓国の早期英語教育はどのように進んでいるのであろうか?
になりますので、本論でそれに答えていきます。
もう一つの例です。
小学校で英語教育が5年生から必修化がはじまった。それに伴い、多くの幼稚園・保育園でも英語を教えるところが出ていた。幼稚園・保育園から英語を教えるべきであろうか。
小学校の必修から幼稚園・保育園の話題に、さらに、幼稚園・保育園から教えるべきでない、または、教えるべきだというこの問い、すなわちそう答える理由に本論で答えていきます。
レポート・卒論の問いを見つける
先ほどから、「問い」「問い」と出てきていますが、その問いの見つけ方について。
「問い」は日々の生活の中にどこにでもころがっています。
日々の生活で、疑問に思ったことを論文にすることができます。
こちらの動画で、序論と問いの見つけ方についてより詳細に説明しています。
ぜひ、こちらで学習してください。

文献の集め方
次に、本論の書き方です。
本論は、客観的な事実(資料・論文・データ)を並べて自分の意見を表明する部分です。
まず最初に客観的な事実(資料・論文・データ)を集めましょう。
もっと詳しく文献の集め方を知りたい方はレポート・卒論・論文の文献の集め方
より詳しく様々な方法を解説しています。
ここでは簡単に日本国内の学術論文を検索できるデータベースCiNii(サイニィ)についてだけ説明します。
サイニィCiNiiの活用術
レポート・卒論・論文の執筆に必須である日本国内の学術論文を検索できるデータベースCiNii(サイニィ)の使い方について説明します。
CiNii(サイニィ)とは日本国内の学術論文を検索できるデータベースです。
日本国内の研究者が書いた論文をいっぺんに探すことができます。
ポイント1 検索ワードはスペースをあけて入力する。
ポイント1は検索ワードは必ずスペースをあけてということです。
たとえば、インバウンド政策について調べたいと思った場合、「インバウンド 政策」と入れると189件の結果が出ますが、「インバウンド政策」と検索すると44件しかでません。
つまり、「インバウンド 政策」と検索すると両方が使われているどこかに使われている論文が検索できますが、「インバウンド政策」という単語しか検索できません。
つまり「インバウンド政策」と入力してしまうとたとえば、「インバウンドに関する政策」という論文を表示できません。
ポイント2 「本文あり」を選択してから「検索」
学生から「先生PDFがダウンロードできません」という言われることがあります。
はじめから「本文あり」を選択してから検索すれば、PDFが入手できるもののみが検索結果として表示されます。
サイニーについての詳細はこちらの動画をご覧ください。
次にこれらの文献をどのようにレポート・卒論・論文に反映させていくかを説明いたします。
引用の仕方
序論で提起した「問い」について調査・研究するものが論文(卒論・レポートも含めて)です。
その問いの答えを文献・資料・データ などで確認していきます。
また,その際には主観を入れず、客観に徹して自分の解釈や意見は書かないというのが鉄則です。
ゆえに、他人の論文(引用)が一つも引用がない論文は、論文ではないといえます。
つまり、自分の考え・自分の主張(作文・小論文)学術的価値はないということです。
一方で、矛盾するようですが、他人の論文の一部をまるまる写すのは、剽窃(ひょうせつ)と言われます。
他人の論文を引用することは決して悪いことではなく、かえって奨励されることなのですが、その作法を知らずにやると剽窃になります。
正しいコピペ(引用)の仕方をしっかりと学ぶ必要があります。
引用の種類
引用には2つの方法があります。
- 直接引用:論文に書かれている文章をそのまま書き写して引用する。
- 間接引用:論文に書かれている文章を要約して(自分の言葉で)引用する。
ここからは、分野によってかなり異なりますので、参考程度に。
レポート・卒論における直接引用
引用部分を「 」で囲みます。この場合はページ数は書きません。
年代を書き、ページ数を忘れずに。
根岸(1990)は 「もし主たるinputの1つたる教科書のディスコースが現実のディスコースを反映しないものであれば, それに基づいて習得される’discourse competence’も非常に不自然なものとなることが考えられる」(p. 44)と主張しており,
レポート・卒論における間接引用
内容を要約して引用します。
なお、間接引用のときはページ数は書きません。
「 」も必要ありません。
Park (2008)は英語のデジタル教科書に関する調査を小学校の教員と児童に行い,デジタル教科 書は児童の英語のレベルや興味に合わせた内容を掲載できるため
もっと詳しく引用の仕方を学びたい方は正しいコピペ(引用)の仕方・引用文献の書き方をご覧ください。
また、動画もありますので、こちらをご覧ください。
考察の書き方
考察は一言でいうと、序論の最後の問いや本研究の目的で上げた課題に答えていくところです。
つまり序論の最後の問いを、先行研究をもとにより詳しく具体的なものにしたのが本研究の目的で、その本研究の目的の課題に具体的に答えていくのが考察です。
結果は分析結果を無味乾燥(自分の感情を入れずに)に書いていきます。
一方で考察は結果をもとに、それらをまとめたり、組み合わせたり、分解したりしながら自分の意見を書いていく部分です。
ここの結果をまとめたり、組み合わせたり、分解したりしながらが皆様の腕の見せ所です。
詳しい考察の説明は考察・結論(おわりに)の書き方|実例を挙げながら解説!をご覧ください。
動画はこちらです。
レポート・卒論では最後に序論と結論を執筆
最後に序論と結論を執筆しましょう。
序論のチェックポイント
- 序論は逆三角形になっていますか?
- 序論では問いが提出されていますか。
結論は「最後に」「まとめ」「おわりに」などと書くことがあります。
ポイントはだらだら長く書かないことです。1段落か2段落ぐらいに収めましょう。
結論のチェックポイント
- 序論の問いに答えていますか。
- 全体を簡潔にまとめていますか。
- 新しい意見や情報は出していませんか。(出さないように)
詳しい結論の説明は考察・結論(おわりに)の書き方|実例を挙げながら解説!をご覧ください。
レポート・卒論の引用文献の書き方
引用した文献を最後に書かなければなりません。
後から、何がなんだかわからなくなることがよくありますので、引用したら、論文の下のほうに、論文の情報をその都度コピーしておいたほうがいいです。
引用文献の書き方ですが、分野によって大きく異なり、同じ分野でも投稿するジャーナルによって異なりますので、どれが正解とはいえないので、指導教官の先生に従って書いてください。
私がよく使う引用文献の一例をご紹介しておきます。
論文の場合
著者の名前 (年代)「論文の名前」『論文が載っているジャーナルの名前』号数,ページ数
米田佐紀子(2008)「英語劇を通して日本人児童 に英語力を定着させる試み―コミュニケーション 能力からみた発音・語彙・文型の定着を目指して―」 『北陸学院短期大学紀要』40 , 65-84
複数の著者の場合は・で区切る
贄育子・三宅絢花(2014) 「母性看護学実習に対する女子学生の実習前のイメージ,実習中感じたこと,実習後の思い-テキストマイニングによる分析-」『ヒューマンケア研究学会誌』5, 21-28
書籍の場合
著者の名前(年代)『書籍名』出版社の場所:出版社
寺内一(2005)『ビジネス系大学の英語教育イノベーション―ESP の視点から』東京:白桃書房
もっと詳しく引用文献の書き方を学びたい方は正しいコピペ(引用)の仕方・引用文献の書き方をご覧ください。
レポート・卒論は出来上がってからが勝負 何度も読む
ある程度出来上がりましたら、卒論・レポートの17のチェックポイントの動画を見て、自分の論文をチェックしましょう。
また、出来上がったら、「やったできた」ということで、すぐに提出する学生も多いですが、それではだめです。
出来上がったレポート・卒論・論文は毎日1回は紙版にプリントアウトして、読み返しましょう。
必ず論旨がおかしいところ、誤字脱字がたくさん見つかります。
それを何日も続けていくとおかしなところ、誤字脱字が徐々になくなります。
ほとんどなくなったら、提出です。
私は博士論文は、出来上がってから、読み直しを軽く100回以上は行ったと思います。
卒論の場合、最低でも10回ぐらいは読み直しを行いましょう。
もっと詳しくレポートや論文について学びたい方は、以下の書籍を読んでください。
以下の3冊がおすすめです。
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