『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』は、日本国内で興行収入歴代1位を記録し、アカデミー賞長編アニメーション賞も受賞したスタジオジブリの名作です。独特の世界観や魅力的なキャラクターたちは、海外でも高く評価され、英語版ではどのように翻訳されているのか注目を集めています。
本記事では、『千と千尋の神隠し』に登場するキャラクターの英語名や字幕でのセリフ表現、さらにタイトル「Spirited Away」の意味や、湯屋・温泉など文化的な用語が英語でどう訳されているのかまで詳しく解説します。英語学習者にとっては「映画を教材として使う」実践的なヒントになり、ジブリファンにとっても日本語版との違いを知る新しい楽しみ方になるでしょう。
英語字幕を使って視聴すると、日常会話でそのまま使えるフレーズや、直訳では伝わらないニュアンスが学べます。この記事を通して、『千と千尋の神隠し』を英語で味わう魅力を発見してみてください。
- Spirited Away の意味は?英語タイトルの由来を解説
- 英語セリフ早見表(まずは15フレーズ)
- 海外版でのキャラクター名の違い(早見表)
- 千尋・千(Chihiro / Sen)のキャラクター解説と英語での名前の意味
- ハク(Haku / Nigihayami Kohakunushi)のキャラクター解説と名セリフ
- カオナシ(No-Face)のキャラクター解説と英語表現
- 湯婆婆(Yubaba / the witch)のキャラクター解説と英語での呼び方
- 釜爺(Kamajii / Boiler man)のキャラクター解説と役割
- リン(Lin)のキャラクター解説と英語字幕での表記
- 坊・坊ネズミ(Boh / Mouse)のキャラクター解説と変身シーン
- 青蛙(Aogaeru / Frog)のキャラクター解説と英語名
- 用語の英語:湯屋・油屋・神様・魔女は英語で?
- よくある勘違い・誤訳の整理(No-Faceは「顔なし」?)
- 温泉・旅館は英語で?(Spirited Away文脈で使い分け)
- 場面別|英語セリフで学ぶ表現集
- 英語で“あらすじ”を言うテンプレ(120語&超短縮版)
- 主題歌と名セリフの英語表現(字幕の言い換えを比較)
- 英語吹き替えと字幕の違い
- 千と千尋の神隠しを英語で学ぶメリット
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|“Spirited Away”で楽しく英語学習
Spirited Away の意味は?英語タイトルの由来を解説

Spirited Away は「神隠しにあった」「不思議な力に連れ去られた」という意味で、『千と千尋の神隠し』の正式な英語タイトルです。直訳的に「精霊に連れ去られる」という表現で、日本語の「神隠し」を海外の観客に分かりやすく伝える形に調整されています。
spirited は本来「元気な・活発な」という意味の形容詞ですが、ここでは動詞 spirit away(人や物をこっそり連れ去る)から派生しています。つまり Spirited Away は「神秘的な力でさらわれた」という状態を端的に表現しているのです。
当初は直訳的に「Sen and Chihiro’s Spiriting Away」という候補もありましたが、英語圏では覚えやすく短い Spirited Away が採用されました。アカデミー賞受賞歴やDVDタイトル、映画評論でも一貫してこの名称が使われ、現在では世界的に定着しています。
つまり、「千と千尋の神隠し=Spirited Away」 という対応は、単なる翻訳ではなく、文化的な橋渡しを意識したタイトル選択だったのです。
英語セリフ早見表(まずは15フレーズ)
- I want to work here!(ここで働かせてください)
- Don’t be afraid. I’m your friend.(怖がらないで。味方だよ)
- Your name belongs to me now.(あなたの名前は私のもの)
- Come on, Sen!(行くよ、千!)
- Stay away from me!(近寄らないで)
- I remember now!(思い出した!)
- Hold on!(つかまって!/ちょっと待って)
- That’s weird.(変だ)
- Smells good.(いい匂い)
- Create a diversion.(陽動を仕掛ける)
- We’re almost there.(もうすぐ着く)
- I think we took a wrong turn.(道を間違えた気がする)
- Are you sure this is the right way?(本当にこの道で合ってる?)
- Go all the way down the stairs.(階段をずっと下まで行って)
- Rescue your parents.(両親を助けなさい)
海外版でのキャラクター名の違い(早見表)

英語版『Spirited Away』では、固有名をそのまま残す場合と、役割・意味を説明的に英語化する場合があります。まずは全体像を早見表で確認し、気になるキャラの詳細解説に移ってください。
| 日本語 | 英語字幕の主な表記 | 補足 | 詳しく読む |
|---|---|---|---|
| 千尋(Chihiro) | Chihiro → Sen | 名前を奪われ「Sen」に改名。 | 千尋の解説へ |
| ハク | Haku / Nigihayami Kohakunushi | 川の神。英語では river spirit と説明されることも。 | ハクの解説へ |
| カオナシ | No-Face | 欲望・孤独の象徴。断片的な英語セリフ。 | カオナシの解説へ |
| 湯婆婆 | Yubaba / the witch | 魔女。場面により説明的に the witch。 | 湯婆婆の解説へ |
| 釜爺 | Kamajii / Boiler man | 役割名で補足されることあり。 | 釜爺の解説へ |
| リン | Lin | そのまま音写。 | リンの解説へ |
| 坊・坊ネズミ | Boh / Mouse | 変身後は Mouse と表記。 | 坊の解説へ |
| 青蛙 | Aogaeru / Frog | 一般名詞の Frog を使用。 | 青蛙の解説へ |
※ 詳細は各キャラクターのセクションで、英語字幕の実例・言い換え・象徴性まで踏み込み解説しています。
千尋・千(Chihiro / Sen)のキャラクター解説と英語での名前の意味
定義:千尋=10歳の少女で物語の主人公。英語版では Chihiro と表記され、名前を奪われた後は Sen と呼ばれます。
正体と役割
千尋は両親と共に異世界に迷い込み、湯婆婆の支配する油屋で働くことになります。成長を遂げながら仲間を助け、自分自身の名前とアイデンティティを取り戻す役割を担っています。英語字幕では Chihiro が Sen に変わることで、物語の大きなテーマである「名前と自己喪失」が象徴されます。
名シーンと英語セリフ
千尋が必死に訴える「I want to work here!(ここで働かせてください)」は、彼女の勇気と成長を示すセリフです。また、ハクを助けようとする場面の「I will save you!(私が助ける!)」は、主人公らしい強い決意を英語で端的に表現しています。
名前の意味と象徴性
「千尋」という名は「千=多い」「尋=深さの単位」を含み、深遠さを感じさせる名前です。湯婆婆に名前を奪われ「千(Sen)」となる過程は、アイデンティティを失い再び獲得する成長物語を象徴しています。英語版でもこの変化は忠実に反映され、国際的な観客に理解しやすく伝えられています。
ハク(Haku / Nigihayami Kohakunushi)のキャラクター解説と名セリフ
定義:ハク=湯屋で働く少年の姿をした川の神(river spirit)。本名は Nigihayami Kohakunushi。
正体と役割
ハクは湯婆婆の弟子として働く少年の姿をした存在ですが、その正体は「ニギハヤミ・コハクヌシ」という川の神です。かつて千尋が幼い頃に落ちた川であり、彼女を助けた記憶が物語の伏線となっています。英語版では Haku と表記され、本名は Nigihayami Kohakunushi と字幕に示されます。
名シーンと英語セリフ
ハクが千尋に声をかける場面で「Don’t be afraid. I’m your friend.(怖がらないで、僕は君の味方だ)」と語るシーンは、物語全体を支える象徴的な場面です。またクライマックスで「You did it, Chihiro.(思い出せたね、千尋)」と伝える場面は、失われた記憶とアイデンティティの再生を強調しています。
名前の意味と象徴性
「琥珀川」の神であるハクは、人間社会の開発で失われた自然を象徴する存在です。英語では river spirit と説明され、自然破壊や環境問題を国際的に理解しやすく伝えています。
カオナシ(No-Face)のキャラクター解説と英語表現
定義:カオナシ=No-Face。周囲の欲望を映してふるまう顔のない霊的存在(shape-shifting spirit)。
正体と役割
カオナシは文字通り「顔のない存在」で、周囲の人間の欲望を映し出す鏡のようなキャラクターです。英語版では No-Face と直訳され、その不気味さと空虚さが強調されています。湯屋の中で欲望に翻弄され、暴走する姿は人間の欲の象徴といえます。
名シーンと英語セリフ
カオナシが金を差し出して「Eat… gold…」とつぶやく場面は、英語でも断片的なセリフで描かれ、孤独で危うい存在感を表現しています。英語字幕は不完全な文をそのまま使うことで、不気味さを際立たせています。
名前の意味と象徴性
「カオナシ」は日本語では妖怪的なニュアンスを持ちますが、英語の No-Face はシンプルで直感的に理解できる表現です。存在の空虚さやアイデンティティの欠如を端的に示しています。
湯婆婆(Yubaba / the witch)のキャラクター解説と英語での呼び方
定義:湯婆婆=油屋(湯屋)を支配する魔女(the witch)。契約で名を奪い、千尋をSenに改名させる支配者。
正体と役割
湯婆婆は油屋を取り仕切る絶対的支配者で、従業員たちを厳格な規律で管理します。来訪する神々(spirits)をもてなす経営者である一方、契約魔法で千尋から名前を奪い、Sen と呼ばせることで服従を強いる存在です。英語版では固有名として Yubaba が使われますが、文脈説明として the witch(魔女)も頻繁に併用されます。
名シーンと英語セリフ
支配の象徴となるセリフが「Your name belongs to me now.(お前の名前はもう私のものだ)」です。千尋に契約書へ署名させる場面では「Sign your name here.」と迫り、name(名前)=identity(アイデンティティ) を支配する彼女の性質が明確に描かれます。強圧的な口調と対照的に、仕事の能力を評価する現実主義者としての側面も見られます。
名前の意味と象徴性
「湯婆婆」は日本語の「湯(風呂)」「婆(老女)」を含む民話的な語感を持ちます。英語字幕では固有名 Yubaba を保持しつつ、理解を助けるために the witch(魔女)で補足する二層構造を採用。witch とすることで、童話的な「権力・取引・呪い」といった文化連想を英語圏の観客に直感的に伝えます。名前を奪う力は「言葉=自己」を縛る契約魔法のメタファーであり、作品全体のテーマ(記憶・名前・自分を取り戻す)に直結します。
釜爺(Kamajii / Boiler man)のキャラクター解説と役割
定義:釜爺=湯屋のボイラー係(Boiler man)。ボイラー室で薬湯を調合し、ススワタリを使役する熟練者。
正体と役割
釜爺はボイラー室で働く老人で、多数の腕を使いながら薬湯を調合しています。英語版では Kamajii のままですが、役割を説明する形で Boiler man とも呼ばれます。
名シーンと英語セリフ
千尋を助ける場面で「I’m not your father.(俺はお前の父親じゃない)」と突き放しつつ、実際には手を差し伸べる姿は、厳しさと優しさの両面を持つ存在であることを示しています。
名前の意味と象徴性
「釜=ボイラー」「爺=老人」という日本語的な名付けは、英語字幕では直訳され Boiler man と補足されます。労働者としての役割を強調する表現です。
リン(Lin)のキャラクター解説と英語字幕での表記
定義:リン=千尋の先輩にあたる女性従業員(bathhouse worker)。面倒見がよい案内役。
正体と役割
リンは湯屋で働く女性従業員で、千尋の教育係のような立場になります。英語版でも Lin とそのまま表記されます。彼女は千尋にとって姉のような存在であり、異世界でのサバイバルを助けます。
名シーンと英語セリフ
「Come on, Sen!(行くよ、千!)」と千尋を励ます場面は、日常的に使える英語表現であり、学習にも役立ちます。彼女のセリフは全体的にカジュアルで実用的な英語が多いのが特徴です。
名前の意味と象徴性
「リン」という名前は漢字の設定がなく、意味は不明確ですが、英語ではそのまま Lin とされます。シンプルで国際的に理解しやすい名前です。
坊・坊ネズミ(Boh / Mouse)のキャラクター解説と変身シーン
定義:坊=湯婆婆の巨大な赤ん坊(Boh)。途中で魔法により坊ネズミ(Mouse)へ変身。
正体と役割
坊(Boh)は湯婆婆の巨大な赤ん坊で、物語中盤で魔法によってネズミに変えられてしまいます。英語版では人間の姿のときは Boh、変身後は Mouse と呼ばれます。
名シーンと英語セリフ
泣き叫ぶシーンでは「Don’t touch me!(触るな!)」と怒る姿が印象的です。ネズミになってからは言葉を失いますが、仕草がユーモラスに描かれています。
名前の意味と象徴性
「坊」は日本語で赤ん坊を意味する言葉で、そのまま音写して Boh となっています。変身後に Mouse と呼ばれることで、立場の転落や無力さが強調されます。
青蛙(Aogaeru / Frog)のキャラクター解説と英語名
定義:青蛙=油屋で働くカエルの従業員(Frog)。小心かつ強欲な小物キャラ。
正体と役割
青蛙(あおがえる)は湯屋で働く従業員で、典型的な小物キャラクターとして登場します。英語版では Frog とそのまま翻訳されます。
名シーンと英語セリフ
金に目がくらんで「Gold! Gold!(金だ!金だ!)」と叫ぶ場面は、欲望に支配される人間の姿を滑稽に映しています。英語字幕でもシンプルに Gold! と表現され、わかりやすさが際立ちます。
名前の意味と象徴性
日本語の「青蛙」は固有名詞的に聞こえますが、英語の Frog は一般名詞でシンプルです。わかりやすい翻訳によって、子どもから大人まで理解できるキャラクターに仕上がっています。
用語の英語:湯屋・油屋・神様・魔女は英語で?
『千と千尋の神隠し』で頻出する文化語を、英語字幕の実例・ニュアンス・言い換えと一緒に整理します。日本語のままでは伝わりにくい概念は、直訳+説明(apposition)か、ローマ字表記+英語補足が有効です。
「湯屋」は英語で?――bathhouse を基本に、spa/public bath との違い
bathhouse がいちばん自然。温浴施設全般を指し、物語の舞台の「大衆浴場・入浴施設」という機能に合致します。spa はリゾート/療養ニュアンスが強く、public bath は公共浴場の制度的響きが出るため、作品紹介では bathhouse を推奨。
例)Chihiro works at a mysterious bathhouse run by a witch.(千尋は魔女の運営する不思議な湯屋で働く)
「油屋(店名)」はどう書く?――Aburaya(Bathhouse)の併記が安全
固有名は基本的に Aburaya とローマ字表記。直訳の oil house は意味がズレやすいので、初出で Aburaya (the bathhouse) と補足する形が読み手に親切です。以降は Aburaya だけでOK。
例)Chihiro signs a contract to work at Aburaya (the bathhouse).
「神様」は英語で?――spirits / gods / deities の使い分け
神道的な「カミ(自然霊)」は spirit(s) が最もしっくりきます。人格神的な強い神格を出したいときは deity、多神教として一般的に言うなら gods。作中の川の神は river spirit と説明的に言うと文脈が伝わります。
例)The bathhouse serves visiting spirits, including a polluted river spirit.
kami をそのままローマ字で書く手もありますが、一般読者には spirit と並記(kami (spirit))すると誤解が減ります。
「魔女」は英語で?――witch / sorceress の訳し分け
湯婆婆は基本 witch でOK。童話的・民話的な魔法使いのニュアンスに合致します。sorceress は呪術・魔術の技に焦点を当てる語で、やや硬くファンタジー色が強いので、作品紹介・学習文脈では the witch の方が通りが良いです。
例)Yubaba, the witch, steals Chihiro’s name and renames her Sen.
関連ボキャブラリー――boiler room / stoke / furnace など
湯屋の“裏方”描写に使える語彙。釜爺パートの英語学習に最適です。
- boiler room:ボイラー室(釜爺の持ち場)
- stoke (the fire):火をくべる/(比喩)感情をあおる
- furnace:炉
- soot sprites:ススワタリ(直訳は避け、既存英語名を使用)
- herbal bath / medicated bath:薬湯
例)Kamajii works in the boiler room, tirelessly stoking the furnaces to prepare herbal baths for the spirits.
よくある勘違い・誤訳の整理(No-Faceは「顔なし」?)
『千と千尋の神隠し』を英語で紹介するとき、キャラクター名や用語の誤訳・直訳の仕方がよく議論になります。ここでは代表的な勘違いを整理し、正しい英語表記やニュアンスを確認しておきましょう。
No-Face は「顔なし」?
カオナシは日本語では「顔がない存在」ですが、英語版では No-Face と固有名として扱われます。faceless と直訳してしまうと「匿名の/顔が見えない」という意味になり、ニュアンスが変わってしまうので注意が必要です。
例)No-Face follows Chihiro into the bathhouse.(カオナシが千尋の後をつけて湯屋に入る)
Radish Spirit(大根の神)
大根の神様は日本語ファンの間では「大根の神」と呼ばれますが、英語字幕では Radish Spirit と表記されます。直訳の radish god ではなく spirit を使うのは、神道的な「カミ=自然霊」を伝えるための工夫です。
例)The Radish Spirit silently accompanies Chihiro in the elevator.(大根の神が無言で千尋とエレベーターに乗る)
Stink Spirit(オクサレ様)
日本語の「オクサレ様」は英語字幕では Stink Spirit。直訳すると「臭い霊」となりますが、実際には汚染された川の神(polluted river spirit)のことです。字幕では一度 Stink Spirit と出し、正体が明らかになる場面で river spirit と切り替わります。
例)The bathhouse workers are horrified when the Stink Spirit arrives.(湯屋の従業員たちはオクサレ様の来訪に驚愕する)
Kamajii = Boiler man の関係
釜爺は英語版では Kamajii という固有名と、役割を説明する Boiler man の両方が使われます。日本語のニュアンスを失わないために名前を残しつつ、子どもでも理解できるように職能で補足するという二重構造になっています。
例)Chihiro meets Kamajii, the Boiler man, in the boiler room.(千尋はボイラー室で釜爺=ボイラー係と出会う)
このように、英語字幕では「神様=spirit」「魔女=witch」「役割を説明する補足表現」の3パターンが組み合わさり、日本語ファンが思う直訳とは異なる形で表現されています。これを押さえると、英語での解説や学習がより正確になります。
温泉・旅館は英語で?(Spirited Away文脈で使い分け)
『千と千尋の神隠し』の舞台イメージは「温泉街」や「旅館」を連想させます。英語では hot spring、inn、bathhouse など複数の言い方があり、それぞれニュアンスが異なります。文脈に応じた使い分けを整理しました。
hot spring と onsen の違い
hot spring は一般的な「天然の温泉」の英訳。観光案内や説明文ではこの表現が自然です。一方で日本文化特有のニュアンスを残したい場合は onsen をそのまま使い、onsen (Japanese hot spring) と補足すると誤解がありません。
例)Spirited Away is inspired by Japanese onsen towns, or hot spring resorts.
inn と ryokan の使い分け
inn は宿泊施設一般を指す広い語。ryokan は日本独自の宿泊文化を示すためにローマ字表記されます。作品を紹介するときは、traditional Japanese inn called a ryokan のように併記するのがベストです。
例)The film’s bathhouse is sometimes compared to a traditional Japanese ryokan or inn.
bath と bathhouse の違い
bath は「お風呂」そのものを指す一方、bathhouse は共同浴場や大規模な入浴施設を指します。『千と千尋の神隠し』の油屋は bathhouse と訳され、単なる浴槽ではなく「精霊をもてなす施設」というニュアンスを出しています。
例)Chihiro works at a magical bathhouse where spirits come to bathe.
場面別|英語セリフで学ぶ表現集
ここでは場面別に英語のセリフを学んでいきます。(随時追加していきます)
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それでは、シーン別にボキャブラリーと自然な言い換えを見ていきましょう。
冒頭のドライブシーン
千尋と両親が車で田舎道を走り、新しい家に向かう途中の会話。ここでは「方向転換」「におい」「不満を言う」「息苦しい」といった、日常でよく使う自然な口語表現が登場します。
“We are almost there.”
- almost:ほとんど、もうすぐ。
- there:目的地。
例:We’re almost there. Just five more minutes.(もうすぐ着くよ。あと5分だよ。)
“middle of nowhere”
- nowhere:どこでもない場所。
- middle of nowhere:人里離れた場所、辺ぴな所。
例:Their new house is in the middle of nowhere.(彼らの新しい家は辺ぴな場所にある。)
“stink”
- stink:(本来)「臭う」「悪臭を放つ」。ただし会話では「最悪だ」「つまらない」といった否定的な意味で使われるスラング。
- 例:This place stinks.(ここは最悪だ/気に入らない)
- 映画では千尋が新しい学校を見て「It’s gonna stink.」と言い、「いやな場所だな」と気乗りしない様子を表現している。
“smother”
- smother:覆いかぶせて空気を遮る/押しつぶしてダメにする。
- 映画の文脈(冒頭の車内):千尋が花束をぎゅっと抱えすぎているのを見て、“You’re going to smother them.” のように注意する=「そんなに抱えたら(花が)弱っちゃうよ/ダメにしちゃうよ」。🌸(花は複数扱いで them)
- 例:Don’t smother the plant with soil.(土をかけすぎて植物を弱らせないで。)/The fire was smothered with a blanket.(毛布で火を消した)
その他の意味
- smother:息を詰まらせる、窒息させる/(比喩で)息苦しくさせる。
- 例:The smoke almost smothered me.(煙で息が詰まりそうになった。)
- 例:She felt smothered by her parents’ constant attention.(彼女は両親の過干渉に息苦しさを感じた。)
“hold on to”
- hold on to ~:~につかまる、しっかり握る。
- 例:Hold on to the handrail.(手すりにつかまって。)
“whining”
- whine:ぐずる、文句を言う(鼻にかかった声で)。
- whining:泣き言、文句。
例:Stop whining and help me.(文句言わないで手伝って。)
“turn-off”
- a turn-off(名詞):分岐・側道・出口。映画では父が “I must have missed the turn-off.” と発言。
例:Take the next turn-off on the right.(次の右側の出口で降りてください。) - a turn-off(名詞・スラング):興ざめなもの、不快なもの。
例:His attitude is such a turn-off.(彼の態度は本当に興ざめだ。)
トンネルにたどり着くシーン
両親が森の道に入り、トンネル前で不思議な建物を見つけるまでの会話。ここでは「道を間違える」「近道」「怖がり屋」「古びた建物」「不気味さ」などを表す自然な表現が登場します。
“I think we took a wrong turn.”
- take a wrong turn:道を間違える。比喩で「人生の選択を誤る」。
- 例:He took a wrong turn in his career.(彼はキャリアの方向を誤った。)
“shortcut.”
- shortcut:近道。日常・比喩の両方で使う。
- 例:There are no shortcuts to success.(成功に近道はない。)
- 映画では父が強引に山道へ進むのを正当化するセリフ。
“Don’t be such a scaredy-cat.”
- scaredy-cat:怖がり屋、臆病者。軽くからかうときの言い方。
- 例:Don’t be such a scaredy-cat.(そんなに怖がらないで。)
” plaster”
- plaster:漆喰、壁の塗り材。古い建物の描写に使われる。
例:The plaster’s peeling off the walls.(壁の漆喰がはがれている。) - plaster(英):絆創膏(米:band-aid)。
例:Put a plaster on your cut.(切り傷に絆創膏を貼って。)
“It gives me the creeps.”
- give someone the creeps:ゾッとさせる、不気味に感じさせる。
- 例:That tunnel gives me the creeps.(あのトンネル、気味が悪い)
- 類語:It looks creepy.(不気味に見える)※見た目を強調する場合
- creepy:不気味な、ゾッとする。
- 例:That abandoned house looks creepy.(あの廃屋は不気味だ。)
不思議な街に入るシーン
トンネルを抜けると、両親と千尋は廃墟のような街に足を踏み入れます。ここでは「引っ越し業者」「旅行・寄り道」「つまずく」など、日常でもよく使う単語が登場します。
“movers”
- movers:引っ越し業者。move(動かす)+ -er(~する人/業者)。
- 例:The movers are carrying the furniture upstairs.(引っ越し業者が家具を2階に運んでいる。)
- 例:We hired professional movers to save time.(時間を節約するために業者を雇った。)
“trip”
- trip(名詞):旅行、小旅行。
例:Our trip to Hokkaido was amazing.(北海道旅行は素晴らしかった。) - side trip:寄り道、小さな旅。
例:We took a side trip to Nara while visiting Osaka.(大阪を訪れたとき奈良に寄り道した。) - trip(動詞):つまずく。
例:She tripped over a rock.(彼女は石につまずいた。)
食べ物を見つけるシーン
両親は無人の街で料理の匂いに引き寄せられ、屋台の前に立ち止まります。千尋は不安を訴えますが、両親は「空腹」「支払いはできる」と言って食べ始めます。この場面では「匂い」「支払い」「お腹が空いた」「食べ過ぎる」などの表現に加え、料理を形容する単語 tender も学べます。
“Something smells good.”
- smells good:いい匂いがする。
例:Dinner smells good.(夕食のいい匂いがする。) - 類語:smells delicious / smells wonderful(より強い表現)。
- 逆:smells bad / stinks(悪臭がする)。
“Let’s go and take a look.”
- take a look:ちょっと見る、見に行く。
例:Let’s take a look at that shop.(あのお店を見に行こう。) - 類語:glance(ちらっと見る)、observe(注意深く観察する)。
“Don’t worry. Your dad can pay.”
- pay:支払う。
例:I’ll pay the bill.(私が会計を払うよ。) - 関連:afford(余裕がある)、cover(費用を持つ)。
例:Can you afford this trip?(この旅行は余裕がある?) - 文化的に、英語では「父が払う=家族を安心させる」ニュアンスを伴う。
“We’re starving! “
- starving:飢えている、とても空腹。
類語:famished(フォーマル)
“tender”
- tender:柔らかい(肉など)、優しい(人柄)。
- 料理の文脈:The meat is tender and juicy.(その肉は柔らかくジューシーだ。)
- 性格の文脈:She has a tender heart.(彼女は優しい心を持っている。)
- 関連語:soft(物理的に柔らかい)、gentle(穏やかな)。
両親が豚になった後〜ハクの導き
“That’s weird.”
- weird:奇妙な、不気味な。
👉 strange より強く「超自然的」「常軌を逸している」ニュアンスを含む。 - 語源:古英語の wyrd(運命)。Shakespeare の “Weird Sisters” は魔女を指す。
- 例:That’s weird. Nobody answered the phone.(おかしいな、誰も電話に出ない。)
- 比喩:She’s wonderfully weird.(彼女は独特で魅力的だ。)
“distract”
- distract:注意をそらす、気を散らす。
- 例:Don’t let social media distract you from studying.(SNSで勉強の邪魔をされるな。)
- 派生語:distraction(気を散らすもの)、distracted(注意散漫な)。
“see-through”
- see-through:透けて見える、透明な。
- 例:The curtain is see-through.(そのカーテンは透けている。)
- 比喩:His lies were see-through.(彼の嘘は見え透いていた。)
“Chew it and swallow.”
- chew=「かむ」、swallow=「飲み込む」。chew it and swallow は「よくかんで飲み込みなさい」という日常表現。
- 例:Chew your food well before swallowing.(飲み込む前にしっかりかみなさい。)
- 映画では、ハクが千尋に「この世界の食べ物を口にしないと消えてしまう」と言い、彼女を守るために食べさせる場面で使用。英語では命令文の形で優しくも力強い指示を表している。
“See for yourself.”
- see for yourself:自分の目で確かめてみなさい、実際に見てごらん。
- 例:Don’t believe rumors. See for yourself.(噂を信じるな、自分の目で確かめろ。)
“spell”
- =「呪文、魔法」。ファンタジーで頻出。
- 例:The witch cast a spell on him.(魔女が彼に呪いをかけた。)
- 比喩:under the spell of music(音楽に魅了されて)。
“break the spell”
- =「呪いを解く、魔法を破る」。
- 例:Only true love can break the spell.(真実の愛だけが呪いを解くことができる。)
“thee”
- 古風な「あなた」(=you)。詩や呪文で雰囲気を出すために使われる。
- 例:With this ring, I thee wed.(この指輪をもって、あなたと結婚します。)
“Always nice to see you.”
- Always nice to see you:直訳は「あなたに会えていつも嬉しい」。文法的には It’s always nice to see you. の省略形で、主語 It’s が省かれている口語表現。
- 例:Always nice to see you again!(また会えて嬉しいよ!)
👉Nice to see youとNice meeting you.の違い
“Take a deep breath.”
- take a deep breath:直訳は「深呼吸する」。緊張や不安を和らげるときに最もよく使われる表現。
- 例:Take a deep breath and relax.(深呼吸して、落ち着いて。)
- 映画では、ハクが不安で泣きそうな千尋に「深呼吸して」と声をかけ、現実と異世界の境界を越える直前のシーンで登場。精神的に“踏みとどまらせる”意味合いを持つ。
- 学習のポイント:「breathe(息をする)」は動詞、「breath(息)」は名詞。スペルと発音が似ているので注意。Take a deep breath. の “th” は無声の θ 音。
呼吸に関する英語をもっと学びたい方はこちら>>呼吸の英語
“hold your breath”
- =「息を止める」。
- 例:Hold your breath and count to ten.(息を止めて10数えて。)
- 比喩:hold one’s breath(固唾をのむ)。
湯屋の入口〜奥へ逃がす指示シーン
橋を渡りきった直後、千尋は息をしてしまい気づかれかけます。ハクは千尋を助けるために“陽動”を仕掛け、裏門からボイラー室へ向かうルートを具体的に伝えます。
“create a diversion”
- diversion:注意そらし/陽動作戦。create/stage a diversion と結びつきやすいコロケーション。
- 例:They created a diversion so the VIP could leave safely.(要人が安全に離れるために陽動を仕掛けた。)
“when things quiet down”
- =「騒ぎが収まったら」。quiet down は「静まる/鎮まる」。タイミング指示の口語フレーズ。
- 例:Let’s talk when things quiet down.(状況が落ち着いたら話そう。)
“back gate”
- =裏門。go out through the back gate で「裏門から出る」。方向+経路を明確にする前置詞句 through の使い方も押さえる。
- 例:Go out through the back gate and turn right.(裏門から出て右へ曲がって。)
“go all the way down (the stairs)”
- all the way:最初から最後まで、ずっと。方向副詞と好相性。go all the way down=「(階段を)ずっと下まで降りて」。
- 例:Go all the way down the hall and take the last door.(廊下をずっと進んで一番奥のドアへ。)
“boiler room”
- =ボイラー室(給湯・蒸気設備のある部屋)。建物内の“サービスエリア”を示す実用語彙。
- 例:Meet me in the boiler room at noon.(正午にボイラー室で会って。)
“stoke (the fires)”
- stoke:火をくべる、燃え立たせる。直喩だけでなく比喩で「感情・議論をあおる」にも使う。
- 例:They had to stoke the fire all night.(一晩中、火に薪をくべねばならなかった。)/The speech stoked anger.(演説は怒りをあおった。)
“boiler man”
- =ボイラー係(作中の Kamajii)。職能を表す複合名詞。歴史的には stoker(火手)とも。
- 例:He worked as a boiler man in a factory.(彼は工場でボイラー係として働いていた。)
“I’m coming”
- =「今行くよ」「今そっちに向かってる」。
- come は相手のいる方向へ動くときに使い、go は相手から離れる方向に使う。
- 例:Mom, I’m coming!(ママ、今行く!)/I’m going now.(もう行くね)
- 映画では、呼ばれたハクが返事として「今行く」と言う自然なセリフ。
釜爺(Kamajii)との出会い|ボイラー室のシーン
千尋がハクの指示どおり裏口から湯屋に入り、地下のボイラー室へと降りていく場面です。暗く不気味な階段を下りると、そこには無数のススワタリ(Soot Sprites)が働いており、ボイラーを操る六本腕の老人・釜爺(Kamajii)が登場します。ここでは職人気質の英語表現やファンタジーに登場する素材の単語など、実践的な英語が多数登場します。
“Out of the way!”(どけ!)
- out of the way:「邪魔だ!/どいてろ!」という命令表現。混雑した場所や作業現場などでよく使われる。
- 例:Out of the way! You’re blocking the door!(どけ!ドアをふさいでるぞ!)
- 釜爺がススワタリたちに向かって怒鳴るシーンで登場。英語字幕では「Out of the way, runts!」と続く。
“Runts!”(ちびども!)
- runt:「ちび」「弱い個体」というスラング。動物や子どもなどをからかうときに使う。
- 例:Those runts can’t lift that box.(あのチビたちにはあの箱は持てない。)
- 釜爺がススワタリたちを「Runts!(ちびども!)」と呼び、職人の荒っぽさを見せる場面。
“Soot”(すす)
- soot:煤(すす)。燃焼の残りかすを指す名詞。
- 例:The chimney was full of soot.(煙突が煤でいっぱいだった。)
- 英語版ではススワタリを “Soot Sprites” と表現しており、sprite は「小妖精・精霊」を意味する。
“What if…”(もし〜ならどうする?)
- 釜爺が「人間が来たらどうする?」というニュアンスで使う場面。仮定や心配を表す口語表現。
- 例:What if she gets caught?(もし彼女が捕まったらどうする?)
- 映画でも「What if the witch finds out?(湯婆婆に見つかったらどうする?)」というような台詞で使われる。
“Newt”(イモリ)
- newt:イモリ。魔法や薬の材料として古くから登場する語。
- 例:Eye of newt and toe of frog…(イモリの目とカエルの指…/シェイクスピア『マクベス』)
- 釜爺が棚から材料を取り出しながら「Newt!(イモリだ!)」とつぶやき、魔法使いのような職人気質を見せる。
“Honcho”(ボス/責任者)
- honcho:リーダー・班長を意味するスラング。語源は日本語の「班長」。
- 例:He’s the project honcho.(彼がこのプロジェクトの責任者だ。)
- 釜爺が「ここは俺の持ち場だ」と主張する場面で「I’m the honcho down here!(ここでは俺がボスだ!)」と登場。
“Back off!”(下がれ!/引っ込め!)
- back off:「近づくな」「引っ込め」という強い命令。
- 例:Back off! I can handle it!(下がれ!俺がやる!)
- 釜爺が千尋を警戒し、距離を取るよう言う場面に対応。
“Wear off”(効果が切れる/薄れる)
- 薬や呪文の効果が「切れる」ことを表す。
- 例:The spell will wear off by morning.(呪文の効果は朝までに切れるだろう。)
- 釜爺が薬効や魔法の効果について言及する際に使用。
“Chow time!”(飯の時間だ!)
- chow time:くだけた口語表現で「食事の時間」。軍隊や工場の仲間内でよく使う。
- 例:It’s chow time, boys!(飯だ、みんな!)
- 釜爺がススワタリたちに合図する場面に登場し、労働現場的な雰囲気を出している。
リン(Rin)との出会い〜エレベーターで湯婆婆の部屋へ
釜爺の助けで湯屋に潜り込んだ千尋は、リン(Rin)という若い女の従業員に導かれて、湯婆婆のもとへ向かいます。ここでは、皮肉や励まし、職場の口調など、自然な日常英語が多く登場します。
“What a dope!”(まぬけね!)
- dope:スラングで「まぬけ」「おばかさん」。文脈によっては「情報」や「麻薬」という意味もある。
- 例:Don’t be such a dope!(そんなバカなことするな!)
- リンが千尋に向かって「What a dope!」と吐き捨て、未熟だけど憎めない子という雰囲気を出すセリフ。
“Stick one’s neck out”(危険を冒して助ける)
- =「首を突き出す」→「自分を危険にさらす」「リスクを取る」。
- 例:He really stuck his neck out to help me.(彼は危険を冒して私を助けてくれた。)
- リンが「You know he’s really sticking his neck out for you.(釜爺はあんたのために危険を冒してるのよ)」と言い、感謝を促すシーン。
“Get over here!”(こっちに来な!)
- get over は「克服する」以外にも「〜に来る」という意味で使われる。
- 例:Get over here right now!(今すぐこっちに来なさい!)
- リンが千尋に「Get over here. You wanna lose your nose?(こっち来な、鼻をなくしたくなかったら)」と強い調子で言う場面。
“Radish spirit”(大根の精)
- radish spirit:直訳は「大根の精霊」。spirit は「精霊・神様」を意味する。
- 例:The radish spirit looks calm and gentle.(大根の精霊は穏やかそうに見える。)
- リンが「The radish spirit. Sorry, sir. This elevator doesn’t go any higher.」と言い、客人として丁寧に扱う姿勢を見せる。
“Get over it”(乗り越えなさい)
- 感情的な動揺や失敗を「乗り越える」「気にしない」という意味。
- 例:You failed the test? Get over it and try again.(テスト落ちた?気にせずまた挑戦しな。)
- リンのような現実主義のキャラが使いそうな表現。映画では直接の台詞にはないが、性格を理解する上で自然に関連づけられる。
湯婆婆の部屋のシーン|契約と改名の瞬間
千尋がリンに連れられて湯婆婆の部屋にたどり着く場面です。豪奢で圧迫感のある部屋の中で、湯婆婆は赤子を抱きながらも千尋を威圧し、仕事を求める少女を嘲笑します。このシーンでは侮蔑語・労働・契約・魔法に関する語彙が多く登場し、英語学習的にも非常に学びがいのある場面です。
“Pathetic”(みじめな・情けない)
- pathetic:相手を軽蔑して「情けない」「見てられない」と言うときの形容詞。
- 例:You’re so pathetic!(ほんと情けないね!)
- 湯婆婆が登場時に「You’re the most pathetic little girl I’ve ever seen.」と千尋を罵る。
“Racket”(騒音・やかましさ)
- racket:やかましい音・騒ぎ。湯婆婆が「Quiet down. You’re making a racket.」と言って、赤ん坊が起きるのを嫌がる。
- 例:What’s all that racket?(何の騒ぎだ?)
- 日本語字幕では「うるさいよ!赤ん坊が起きるだろ!」に相当。
“Weakling”(弱虫)
- weakling:「弱虫」「ひ弱なやつ」。力のない人を見下して言う語。
- 例:Don’t be such a weakling.(そんな弱虫になるな。)
- 湯婆婆が「You’re just a stinking, useless weakling.」と吐き捨てる。
“Replenish”(補う・満たす)
- replenish:欠けたものを満たす・補充する。湯婆婆が湯屋を説明する台詞「It’s a bathhouse for the spirits. It’s where they come to replenish themselves.」で登場。
- 例:Replenish your energy with some rest.(休んでエネルギーを回復しなさい。)
“Gobble”(がつがつ食べる)
- gobble:「むさぼるように食べる」。動物的な食べ方を表す動詞。
- 例:Don’t gobble your food.(がつがつ食べないの。)
- 湯婆婆が「your parents, who gobbled up the food of the spirits like pigs」と言い、千尋の両親を責める。
“Piglet”(子ブタ)
- piglet:小さなブタ。侮蔑や変身の象徴的な語として使われる。
- 例:That kid eats like a piglet.(あの子はブタの子みたいに食べる。)
- 湯婆婆が「You could be a piglet.」と言って、千尋への脅しに使う。
“Coal”(石炭)
- coal:炭。Kamajiiのボイラーと対比的に、湯婆婆が「Or maybe you’d prefer a lump of coal.(石炭の塊になりたいのかい?)」と発言。
- 例:He shoveled coal into the furnace.(彼は炉に石炭をくべた。)
“Why don’t you…”(〜したらどう?)
- Why don’t youは提案または皮肉の定番フレーズ。湯婆婆は尋問調で「Why don’t you tell me?(言ってみなさいよ)」と迫る。
- 例:Why don’t you calm down?(落ち着いたら?)
“Spoiled bums”(甘やかされた怠け者)
- spoiled=甘やかされた/bum=怠け者・役立たず。
- 例:I’ve got all the lazy bums I need.(怠け者ならもう足りてる。)
- 湯婆婆が「lazy, spoiled crybaby」と千尋を罵倒する流れの中で登場。
“Breathe / Breath”(息をする/息)
- breathe(動詞):「息をする」、breath(名詞):「息」。湯婆婆は「I’ll work you until you breathe your very last breath.(最後の一息をつくまで働かせてやる)」と脅す。
- 例:Take a deep breath.(深呼吸して。)
“Pigpen”(ブタ小屋)
- pigpen:豚小屋。汚れた場所の比喩にも使われる。
- 例:Clean up your room—it looks like a pigpen!(部屋を片づけなさい、豚小屋みたいだよ!)
- 湯婆婆が「you’ll be joining your parents in the pigpen」と言い放ち、契約を迫る場面で使用。
湯屋で働く初日の場面
ゆばばのもとで名前を奪われ、「千(Sen)」として働くことになった千尋。ハクに導かれて、湯屋の先輩・リンと出会います。ここでは、職場のリアルな英語表現や皮肉を交えたセリフが多く登場します。リンのぶっきらぼうな言葉遣いを通して、実践的な英会話フレーズを学びましょう。
“Get going!”(さっさと行け!)
- get going:「出発する」「行動を始める」。命令形で「さっさと行け!」の意味に。
- 例:Get going or we’ll be late!(早くしないと遅れるよ!)
- 映画ではハクがリンに千尋を託す際、「Sen, get going!」と急かす場面で使用。
“Pick on”(いじめる/押しつける)
- pick on:「〜をからかう」「責める」。理不尽に当たるニュアンスがある。
- 例:Why are you picking on me?(なんで私ばっかり責めるの?)
- リンがハクに「なんで私に押しつけるの?」という調子で文句を言うシーン。
“pull off”(やり遂げる)
- pull off:難しいことを「成功させる」「やってのける」。
- 例:I can’t believe you pulled it off.(よくやったね、信じられない!)
- リンが「千尋が働く許可を得た」ことに驚き、称える台詞で使用。
“Keep on your toes”(気を抜くな)
- keep on one’s toes:「常に警戒している」「気を引き締める」。
- 例:You need to keep on your toes in this job.(この仕事では常に気を抜くなよ。)
- リンが千尋に「気を張ってないとやっていけないよ」と言う場面で登場。
“puny”(ちび/弱っちい)
- puny:「小さい」「貧弱な」「弱々しい」。軽いからかいに使われる。
- 例:You’re so puny!(ちびっこいね!)
- リンが千尋の小柄さを見て冗談交じりに言う場面。やや愛嬌のある言い方。
“Way too big”(大きすぎる)
- way too +形容詞:「〜すぎる」を強調。「way」は「ずっと/かなり」の意味。
- 例:That hat is way too big for you.(その帽子、あなたには大きすぎるよ。)
- リンが千尋に貸した制服がぶかぶかだった場面で使用。
“Barely stand”(ほとんど我慢できない)
- stand は「立つ」以外に「我慢する」「耐える」という意味を持つ。
- barely は「かろうじて」「ほとんど〜できない」。組み合わせると「ギリギリ我慢している」。
- 例:I can barely stand him.(彼にはほとんど我慢できない)
- リンがハクについて「うんざりだわ」という皮肉を言う場面に対応。
“henchman”(手下/子分)
- henchman:ボスに従う部下・子分。軽蔑や皮肉を含む。
- 例:He’s just the boss’s henchman.(あいつはボスの手下にすぎない。)
- リンがハクを「ゆばばの手下」と呼ぶシーンで登場。
湯屋の夜〜仕事初日の準備シーン
リンに助けられ、千尋が湯屋の上階で一晩を過ごす場面。恐怖と疲労で眠りにつく彼女に対し、リンが「寝れば少しは楽になるわ」と声をかける。翌朝、ハクが再び現れ、千尋に仕事の流れを教えながら、現実の世界に戻るための道を示す。ここでは「休む」「耐える」「支える」といった英語表現が多く登場します。
“Sleep off”(眠って回復する)
- sleep off:眠って疲れ・酔い・ショックなどを回復すること。「眠って〇〇を抜く」。
- 例:She tried to sleep off her exhaustion.(彼女は寝て疲れをとろうとした。)
- リンが千尋に「Sleep it off. You’ll feel better.(寝れば楽になるよ)」と声をかけるような場面で使用。
“Hold on to”(しっかりつかまる/手放さない)
- hold on to:何かをしっかり握る/信念や希望を失わない。
- 例:Hold on to the rail!(手すりにつかまって!)/Hold on to your courage.(勇気を失うな。)
- ハクが千尋に「Hold on to me!(しっかりつかまって!)」と助ける場面や、後半で「名前(identity)を失うな」という象徴的意味にも通じる。
“Catch your breath”(息を整える)
- catch one’s breath:走ったり動揺した後に「息を整える」。
- 例:She stopped to catch her breath after running.(走ったあと息を整えるために立ち止まった。)
- ハクが千尋を導くシーンなどで「Take a moment to catch your breath.」といった励ましの文脈で登場する。
“You’ll get used to it.”(そのうち慣れるさ)
- =新しい環境・人間関係などに「いずれ慣れる」という意味の励まし表現。
- 例:Don’t worry. You’ll get used to it.(心配しないで、そのうち慣れるよ。)
- リンが千尋に対して新しい環境(湯屋)で生きる覚悟を促すときの自然な英語訳。
湯屋の大釜掃除〜最悪の初仕事を任されるシーン
リンと千(千尋)は、巨大で長年放置されてきた大釜の掃除を任される。釜の底にはfilthy sludge(汚いヘドロ)が何層にもcaked(こびりつき)、悪臭が漂っている。リンは「これは嫌がらせだ」と文句を言いながら作業を進め、千に手順を教えつつ、薬湯の札をもらうためにforeman(現場監督)のところへ行かせる。この場面では「汚れ」「こすり落とす」「浸す」「ドジ」といった英語表現が多く登場します。
“Jerk”(嫌な奴・意地悪な人)
- jerk:意地悪な人・感じの悪い人・嫌な奴。
- 例:Don’t be such a jerk.(そんな嫌な奴みたいなこと言わないで。)
- リンが大釜を見て「Those jerks. They haven’t cleaned this tub in months.(あいつらサボりすぎ)」と言うように、前任者への怒りを表す表現。
“Filthy sludge”(汚いヘドロ)
- filthy:ひどく汚い、汚れきった。
- sludge:ヘドロ状のどろどろした汚れ。
- 例:The tub is full of filthy sludge.(湯釜は汚いヘドロでいっぱいだ。)— リンが「We only use this tub for our really filthy guests.」と言うシーンと結びつく表現。
“Caked”(こびりついた)
- caked:汚れなどが厚く固まり、表面にこびりついている状態。
- 例:The dirt was caked on the bottom of the tub.(汚れが釜の底にこびりついていた。)
- リンの「This sludge is so caked on, it’ll take days to scrub off.(こびりつきすぎて何日もかかる)」という台詞をイメージしやすい形で学べる表現。
“Scrub off”(こすり落とす)
- scrub off:ブラシやスポンジで強くこすって汚れなどを落とす。
- 例:We need to scrub off all this grime.(この汚れを全部こすり落とさないといけない。)
- 大釜の内側にこびりついた sludge を落とすために、リンと千が実際に行う作業を表す自然な動詞表現。
“Harassment”(嫌がらせ)
- harassment:理不尽な扱い・いじめ・嫌がらせ。
- 例:This is clearly harassment.(これは明らかに嫌がらせだ。)
- リンが「こんなの完全に嫌がらせでしょ」と愚痴るようなニュアンスで、大釜の掃除を押し付けられた不満を表現できる。
“Soak”(浸して落とす)
- soak:水や薬湯に浸して、汚れや固まりを柔らかくする・ふやかす。
- 例:We’ll have to soak it off first.(まず浸してから落とさないとね。)
- リンが「We’ll have to soak it off. Get an herbal soak token from the foreman.」と言い、大釜の汚れを落とすために薬湯札を取りに行かせる流れとつながる表現。
“Foreman”(現場監督・係長)
- foreman:作業現場を仕切る人、現場監督・係長。
- 例:Ask the foreman for an herbal soak token.(薬湯の札は係長に頼みなさい。)
- 湯屋で薬湯の札を管理している foreman が、千に対して「自分でこすれ」と冷たく突き放すシーンで重要な役割を持つ語。
“Sulfur soak” / “Mugwort bath”(硫黄湯/ヨモギ風呂)
- sulfur soak:硫黄成分の入った薬湯(硫黄風呂)。/mugwort bath:ヨモギの薬草風呂。
- 例:The foreman ordered one sulfur soak, but Sen got a mugwort bath token.(係長は硫黄湯を出したが、千はヨモギ湯の札を受け取った。)
- foreman が「One sulfur soak.」と他の客向けの札をさばく一方で、千の札が「Mugwort bath?」として特別扱いされる場面にぴったりの表現。
“Klutz”(ドジな人・不器用な人)
- klutz:不器用でよく失敗する人、ドジ。
- 例:You’re such a klutz.(ほんとドジだね。)
- 千が札をうまく扱えず失敗したとき、リンが「Ugh, you’re such a klutz.(まったくドジね)」と軽く突っ込むシーンにぴったり。
“Murky”(濁った・にごっている)
- murky:水や空気が濁っていてよく見えない、にごっている。
- 例:The water is so murky you can’t see the bottom.(水が濁りすぎて底が見えない。)
- リンが「With water this murky, you can’t see all the sludge in the tub.(これだけ濁ってたら、ヘドロも見えやしない)」と話すような、湯釜の状態を描写する表現。
“Refill”(注ぎ直す・補充する)
- refill:液体・飲み物・湯などを「入れ直す」「補充する」。
- 例:Could you refill the tub with fresh water?(新しいお湯を釜に入れ直してくれる?)
- 千が大釜の湯を入れ替えたり、オクサレ様のためにお湯を追加するときに、「She wants to refill the tub.」のように説明できる表現。
“Formula”(薬湯の配合・特別レシピ)
- formula:薬や化学品、薬湯などの「配合・処方・特別レシピ」。
- 例:That’s our best herbal formula.(それはうちで一番の薬草配合だ。)
- 千が大量の薬湯札を使って湯を入れ替えたとき、係長が「Oh no! That’s our best herbal formula!(うちで一番の薬湯なのに!)」と慌てるシーンを説明するときに使える表現。
“オクサレ様”来訪〜川の主の正体を見抜くシーン
強烈な悪臭とともに「オクサレ様」が湯屋に現れ、従業員たちは逃げ惑います。湯婆婆は千に対応を命じ、千は恐る恐る湯へ案内しながら、体の側面に刺さっているthorn(とげ)の存在に気づきます。ロープで皆が一斉に引っ張るよう指示され、「Step on it!(急げ!)」と号令がかかる場面も印象的です。また、千が命令に「でも…」と言いかけたときに、湯婆婆が“No buts.”と言って一切の言い訳を封じるなど、「厳しい指示・耐える・勇気を出す」といった英語表現が詰まっています。
“Scum”(汚物/ろくでなし)
- scum:液体の表面に浮く汚物・アク/最低な人間・クズのような人。
- 例:There was a layer of scum on the water.(水面に汚れの薄い層が浮かんでいた。)
- 湯婆婆が「What useless scum is slinking around in the rain?(こんな雨の中をうろついている役立たずは誰だい)」と言うように、オクサレ様を「汚物」のように扱うシーンで使われる言葉。
“Slink”(こそこそ動く・忍び寄る)
- slink:こそこそと人目を避けて歩く・忍び寄る。
- 例:He tried to slink away without being noticed.(彼は気づかれないようにこそこそ立ち去ろうとした。)
- 湯婆婆の「What useless scum is slinking around in the rain?」という台詞で、雨の中を重く動き回るオクサレ様の姿を表現する動詞。
“Stinks”(ひどく臭う)
- stink / stinks:悪臭を放つ、ものすごく臭う。
- 例:It stinks up the whole place.(ここ一帯がひどい臭いで充満している。)
- オクサレ様が湯屋の中に入ってきたとき、従業員たちが鼻をつまみながら「It stinks!(くさっ!)」と言いそうな、強烈な臭いを表す表現。
“No buts.”(言い訳はなし・ぐずぐず言うな)
- No buts.:「でも(but)〜」という言い訳を一切させない強い言い方。「異論は認めない」「言い訳するな」のニュアンス。
- 例:Do it now. No buts.(今すぐやりなさい。言い訳はなし。)
- 千が「でも…」と言いかけたとき、湯婆婆が「No buts or I’ll turn you into coal.(言い訳するなら石炭にしてやるよ)」と脅すような場面で使える表現。
“Thorn”(とげ)
- thorn:植物のとげ、身体に刺さって痛みを与えるもの。
- 例:There’s a thorn in his side.(彼の脇腹にとげが刺さっている。)
- 千がオクサレ様の身体を支えながら「It feels like there’s a thorn in his side.(脇腹にとげが刺さっているみたい)」と気づき、その“とげ”をロープで皆と引き抜こうとする、重要な伏線となる表現。
“Step on” / “Step on it!”(踏む/急げ!)
- step on:足で踏む。/step on it!:直訳は「アクセルを踏め」から転じて「急げ!」という意味の決まり文句。
- 例:Step on it! We don’t have much time.(急げ!時間がない。)
- オクサレ様の“とげ”を抜くためにロープを握った従業員に、湯婆婆が「Step on it!(急ぎな!)」と号令をかけるような場面で使える表現。足で何かをstep onするイメージと合わせて覚えやすい。
英語で“あらすじ”を言うテンプレ(120語&超短縮版)
『千と千尋の神隠し』を題材に、英語であらすじを伝えるときに使えるテンプレートを紹介します。長めの120語バージョンと、会話や発表で役立つ50語バージョンを用意しました。
120語テンプレ(しっかり版)
Spirited Away is a Japanese animated film directed by Hayao Miyazaki. It tells the story of Chihiro, a young girl who wanders into a mysterious world with her parents. Her parents are turned into pigs after eating food meant for the spirits. To survive and rescue them, Chihiro works at a magical bathhouse run by a witch called Yubaba. With the help of Haku, a mysterious boy who is actually a river spirit, Chihiro learns courage, responsibility, and the power of remembering her true name. The film is a journey of growth and identity, mixing Japanese folklore with universal themes of family and hope. (約120語)
50語テンプレ(超短縮版)
Spirited Away is about Chihiro, a girl trapped in a spirit world. Her parents become pigs, and she must work at a bathhouse ruled by Yubaba. With Haku’s help, she finds courage, saves her parents, and returns home. It’s a story of growth and identity. (約50語)
使える接続詞・時制のコツ
- まずは現在形で統一:物語紹介は “It tells the story of…” のように現在形が自然。
- 接続詞を活用:after, because, with the help of, in order to などを入れると一気に整理された英文に。
- 成長や教訓のまとめ:最後に It’s a story of ~ と締めれば万能。
例)After her parents turn into pigs, Chihiro works at a bathhouse in order to save them. In the end, it’s a story of courage and identity.
主題歌と名セリフの英語表現(字幕の言い換えを比較)
『千と千尋の神隠し』の魅力は、音楽とセリフにもあります。ここでは主題歌「いつも何度でも」の英語表現と、人気の名セリフを字幕の言い換えと比較して紹介します。
「いつも何度でも」の英語表現の例
主題歌「いつも何度でも」は英語では “Always With Me” と紹介されます。直訳すれば「いつも私と共に」ですが、英語ではタイトルとしてシンプルかつ余韻のある表現が選ばれています。
例)The theme song of Spirited Away is called “Always With Me” in English.
歌詞は完全翻訳ではなく、意訳的に紹介されることが多く、「reunion(再会)」「memory(記憶)」「light(光)」など、普遍的なイメージが英語で解説されます。
人気セリフ10選(直訳→自然表現)
以下は有名なセリフを日本語→直訳→英語字幕版の順で並べた例です。直訳との違いを比べることで、自然な英語表現を学べます。
- 千尋:「ここで働かせてください!」
直訳:Please let me work here!
字幕:I want to work here! - ハク:「怖がらないで、僕は君の味方だ」
直訳:Don’t be afraid, I’m on your side.
字幕:Don’t be afraid. I’m your friend. - 湯婆婆:「お前の名前はもう私のものだ」
直訳:Your name is mine now.
字幕:Your name belongs to me now. - カオナシ:「あ…あ…」
直訳:Ah… ah…
字幕:Eat… gold…(断片的な英語で不気味さを演出) - リン:「行くよ、千!」
直訳:Let’s go, Sen!
字幕:Come on, Sen! - 釜爺:「俺はお前の父親じゃないぞ」
直訳:I’m not your father.
字幕:I’m not your dad.(より口語的) - 坊:「触るなー!」
直訳:Don’t touch me!
字幕:Stay away from me! - 千尋:「ハク、思い出した!あなたの名前…!」
直訳:I remembered your name!
字幕:I remember now! Your name is Kohaku River. - 川の神:「よくやった」
直訳:Well done.
字幕:Well done, and thank you. - 湯婆婆:「契約書に名前を書け」
直訳:Write your name on the contract.
字幕:Sign your name here.
このように英語字幕は、直訳よりもわかりやすさ・自然さを優先しているのが特徴です。学習者にとっては「直訳との差分」を意識することで、実際に使える英語表現を身につけることができます。
英語吹き替えと字幕の違い
『千と千尋の神隠し』の英語版には、吹き替え(英語音声)と字幕(英語字幕)の2種類があります。両者には細かい違いがあり、英語学習の視点から見ると注意が必要です。
吹き替え版(英語音声)
吹き替え版では、英語の自然さを優先してセリフが調整される場合があります。例えば「Don’t be afraid. I’m your friend.」のように、英語らしい流れを意識したフレーズが多く使われています。ただし、日本語の細かいニュアンスが削られることもあります。
字幕版(英語字幕)
英語字幕は、日本語の意味を補足する形で直訳に近い表現が多く残されています。たとえば「Your name belongs to me now.(お前の名前はもう私のものだ)」のように、原文の意図がそのまま反映されています。学習にはこちらが最適です。
学習におすすめの組み合わせ
まずは英語音声+英語字幕で視聴し、慣れてきたら英語音声のみで理解度を試すのがおすすめです。こうすることで「耳からのインプット」と「文字からの確認」の両方を鍛えることができます。
千と千尋の神隠しを英語で学ぶメリット

『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』を英語音声や英語字幕で視聴することは、英語学習に大きな効果があります。ジブリ作品はセリフが比較的シンプルで日常的な表現も多いため、英語初心者から中級者まで実用的なフレーズを自然に学べます。
- リスニング力の向上
ナチュラルスピードの英語に触れることで、耳が慣れ、単語やフレーズの切れ目がわかるようになります。特に子ども向けに作られたセリフが多いため、学習者にも聞き取りやすいのが特徴です。 - スピーキングに役立つ表現が豊富
「Don’t be such a scaredy-cat.(怖がりすぎないで)」や「Hold on!(つかまって!)」など、すぐに日常会話で使えるフレーズが多く登場します。セリフを声に出してリピートすることで、自然な発音やイントネーションを身につけられます。 - 英語字幕でインプットを強化
音声と字幕を同時に確認することで、スペルと発音を結びつけて学習できます。難しい単語も字幕を見れば理解がスムーズです。 - 英語版DVD・配信を活用できる
スタジオジブリの映画は英語版DVDや配信サービス(Netflix など海外向け配信)で視聴可能です。日本語と英語を切り替えながら繰り返し観ることで、理解が深まります。
このように、『千と千尋の神隠し』を英語で楽しみながら学ぶことは、語彙力・リスニング力・会話力をバランスよく伸ばす効果的な方法です。
よくある質問(FAQ)
『千と千尋の神隠し』の英語学習や字幕版に関して、よくある質問をまとめました。
- Q英語字幕版と日本語版ではセリフの意味は大きく違うの?
- A
基本的な意味は同じですが、英語版では直訳よりも自然な英語に意訳されている部分があります。例えば「千尋」は Chihiro ですが、湯婆婆に名前を奪われてからは Sen と訳され、アイデンティティの喪失が強調されています。
- Q英語学習には吹き替え版と字幕版のどちらがおすすめ?
- A
英語学習には字幕版(英語音声+英語字幕)がおすすめです。吹き替え版は日本語音声に英語字幕を合わせるため、学習効果が薄れます。英語音声と字幕を同時に確認できる環境が最適です。
- Q英語版Blu-rayやDVDはどこで購入できる?
- A
Amazonや楽天で「Spirited Away Blu-ray(英語字幕付き)」として購入できます。学習目的なら英語字幕入りの海外版Blu-rayを選ぶのがおすすめです。
👉 英語字幕付き『千と千尋の神隠し』Blu-ray(Amazon)
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まとめ|“Spirited Away”で楽しく英語学習
『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』は、単なるファンタジー映画にとどまらず、文化的背景や言葉のニュアンスが詰まった学習素材でもあります。英語字幕や吹き替えで視聴すると、ハクやカオナシ、湯婆婆といったキャラクターがどのように翻訳され、海外の観客に伝わっているのかを確認できます。
また、映画全体を通して「名前」「アイデンティティ」「自然と人間の関係」といったテーマが英語でどう表現されているのかを知ることは、単なる語学学習にとどまらず、文化理解の一歩にもつながります。英語学習者であれば、短いセリフを暗記したり、キャラクター別にセリフを比較したりすることで、自然な表現が身につきやすくなります。
これから『千と千尋の神隠し』を英語で観てみたい方は、英語音声・字幕が収録されたDVDやBlu-rayを利用するのが最も確実です。繰り返し視聴してセリフを聞き取り、自分の英語学習に取り入れてみてください。
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